こんにちは。歯科衛生士の黒川です。みなさんはむし歯予防,歯磨き以外に何か対策はしていますか?最近読んだ虫歯についての本で面白い内容がありました。昭和と令和で医療全体はもちろん、歯科業界でもかなり情報が変わっています。その中でもみなさんに知っていていただきたい内容をいくつか紹介します。
①むし歯は治る病気なのか?
昭和の時の考え
むし歯は「削ってつめる」治療によって、むし歯は「治る」と考えられていました。治療が終わったあと、昭和時代の歯科医院での決め台詞は「はい、なおりましたよ。痛くなったらまた来てください。」でした。当時の常識は「むし歯は治る病気であり、歯科医院は痛くなったら行くところ」でした。
令和の考え
どんな病気においても病気の治療は原因を取り除くことです。それはむし歯治療も同じで虫歯で空いた穴をつめるのは原因除去ではありません。むし歯の原因は酸を出す、口腔内常在菌です。常在菌とは、「常にいる菌」なので口から追い出すことはできません。虫歯治療とは、{むし歯ができる環境にならないように、口腔内を管理すること}です。管理不十分だとむし歯はおこります。だからむし歯に完治はないのです。
②ブラッシング(歯磨き)は食後すぐの方がいい?
昭和の考え
昭和の常識は3・3・1(1日3回、3分以内に、3分磨く)でした。
令和の考え
平成の中頃、食後すぐに歯をみがくと、食事中に歯の表面が脱灰されたエナメル質を傷つけるため、唾液による再石灰化で表面の脱灰が修復される時間を置いたほうが良いとされていました。これはもともと、酸蝕症の話だったにも関わらず、報道のされ方が誤ったまま「食後30分以内の歯磨きは避けるべきである」という考え方が広まってしまいました。虫歯予防のブラッシングの目的は、酸を産生する細菌のエサとなる物質を取り除くとともに、プラークを取り除いて酸を出させないようにすることです。「食後すぐ」が正しい歯磨きのタイミングです。昭和の常識が正しかったのですね。(酸蝕症とは、固いはずの歯の表面・エナメル質が徐々に溶け出してしまう疾患)
③あまり砂糖を取らない日本人はむし歯が少ない?
昭和の考え
砂糖摂取量とむし歯の発生に正の相関が認められなかったため、砂糖はむし歯の元区と考えられ、砂糖摂取量の制限が虫歯予防の常識でした。
令和の考え
砂糖摂取量とむし歯の数を5カ国(日本、スウェーデン、ドイツ、オーストラリア)で比較すると、砂糖摂取量がもっとも少ない日本の子供でももっとも虫歯が多い傾向でした。この理由として、日本人のフッ化物使用頻度が少ないことが挙げられています。また、「だらだら食べ」も原因と考えられています。海外では決められた時間にたくさん甘いものを食べる、デザートの文化があります。一方日本では、いつでもスナック菓子を食べてしまう「だらだら食べ」が多くみられます。
歯科衛生士のためのカリオロジーダイジェスト/クインテッセンス出版 参照
今の歯科は治療だけでなく予防をとても重視しています。むし歯だけに限らず、歯周病も怖い病気です。進行を抑えるには、ご自身の日々のセルフケアとともに歯医者への定期的な検診(検査、スリーニング、むし歯チェックなど)が必要です。ご自身の歯を長く健康に保つ為に痛みや症状がなくても歯科医院に通うことをオススメします。
私達は日々勉強会を開いたり、セミナーを受講して新しい情報を手に入れて、最新の情報を皆さんに発信しています。疑問に思ったことのある内容は歯科衛生士の私達に是非質問してください。